なぜ安倍首相は「云々(うんぬん)」をでんでんと誤読したのか
♪でんでんでんでん、なんでやでんでんでん by 浜田ぱみゅぱみゅ。
冗談は言うが、人間は誰だって間違える。誰かの間違いをみつけたら「よし、自分も間違っていい」と開き直ることが得策。それが首相ならなおさらだ。モルダーじゃないけど、首相もお疲れだったのかもしれない。些細なミスすら許さず、完璧な人間を追い求める。そうした理想を叶えてくれるのは、北の偉大なる将軍様というデストピアだけですぞい。
・誤読
「云々(うんぬん)」はその他もろもろ、以下略のような意味で使われる。「云(うん)」という字は「伝(でん)」と似ている。だから誤読となった。でも、なぜ字形が似ている2つの音は違うのか。同じ「云(うん)」が入った「雲(うん)」という漢字もあるじゃないか。
その謎は伝の旧字体「傳」にあった。もともとは「専」の旧字体「專」が入る漢字だったが、新字体の採用によって簡略化。專が「云」に置き換わる。同様に「転(てん)」の旧字体も「轉」だったりする。元の字が違うので「云」を含んでいてもうんと読まない訳。
この調子で「博」「縛」の簡体字を調べるも「博(表示できぬ)」「缚」だった。ワイチャイニーズピーポー。拡大して目を凝らしてみると、寸の上には「甫」が乗っている。でも、なぜか日本語では「専」に置き換わっている。博と縛に点がつくのは「甫」の名残なのか。この結果「専(せん)」と「博(はく)」「縛(ばく)」で読みのずれが生じている。
【云】「雲」の簡化字。「云」が「雲」のもとの字で、雲気を描いた象形文字。後に仮借で「いう」の意味に用いられるようになったため、「雨」を加えて「雲」となった。この簡化で原字に統合された。2Y14 pic.twitter.com/B9enyQjls8
— 簡化字bot (@jianhuazi_bot) 2017年6月21日
そもそも、雲のもとの字が「云」だった。簡体字では先祖返りしている。
云(yún 2)=雲の意味
运(yùn 4)=運ぶの簡体字。画数の少ない同じ音をしんにょうに乗せている。
ただし、同じ云を使う簡体字でもこちらは発音が合わない。
动(dòng 4)=動の簡体字
台湾資本の中国食品大手、カップ麺とかでお世話になっていた「康師傅」を「こうしはく」という読み方で処理していた。日本のニュースに「康師伝」とあって間違いに気付く。この前「でんでん」について調べたとこだった。
— チャリダーマン@周藤卓也 (@shuutak) 2017年6月30日
・連声
「云々(云云)」を「うんうん」ではなく「うんぬん」と呼ぶのか。これはアルファベット化すると分かりやすい。
云云→うんうん→unun
unun+n=un nun うん ぬん
言葉は話しやすいように変化していく。フランス語のリエゾンにも似た「連声(れんじょう)」という現象だった。「天王寺(てんおうじ)」をてんのうじと呼ぶのも同じ理屈。
・同じ理屈で
新字体の採用にあたり、旧字体から大幅に変更を加えた結果、横のつながりに気づきにくくなっている。
仮の旧字体が「暇」と同じ「假」だからこそ、仮も暇も「カ」という同じ音を持つ。だから「仮」の字は「反」「坂」「販」「版」「飯」といった字と同じ「ハン」という読みをしない。
囲の旧字体が圍であるから、相違、偉人、胸囲と全部同じ「イ」という読み方。
旧字体の廳は信じたいで庁になった。吹聴と官庁と同じ「チョウ」という読みになる。灯は燈だったので、「トウ」と読みがずれる。
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・周藤 卓也(しゅうとう たくや)
1983年 福岡県生まれ。
150カ国と13万1214.54kmの自転車世界一周を達成。
次なる夢は福岡でゲストハウスの開業。
WEBライターとしてGIGAZINEで連載